その18(2014年8月~2014年12月)

「はじめに」で綴るエイズ対策史

その18(TOP-HAT Newsから)

 2014年の後半は西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行が広がり、世界が震え上がりました。だからこそ、HIV/エイズ分野のメッセージである「Living Together」の重要性も改めて強調する必要があったし、ギャップの解消も重要でした。なぜか基本的な構造は、8年後のいまもあまり変わっていないのではないか。経験を通して学んだこともたくさんあったとは思いますが、同時に「基本的」なんだから構造がなかなか変わらないのも当然・・・そのぐらいに腹をくくり、腰を据えて現実に対応していかなければならないという印象もまた受けます。

~まだ終わっていない~ 第72号(2014年8月)

 12月1日の世界エイズデーを中心にした厚生労働省と公益財団法人エイズ予防財団の2014年度国内啓発キャンペーンのテーマが猛暑の中、発表されました。あまりの暑さに気が付かなかった方もいるかもしれませんね。改めて紹介しておきましょう。
 テーマ
  AIDS IS NOT OVER ~まだ終わっていない~
 毎年の世界エイズデー関連のキャンペーンテーマは最終的に厚生労働省が決めるのですが、そこに至る策定プロセスには様々な立場でエイズ対策に関心を持っている人たちの意見が反映できるようにする工夫がなされています。API-Net(エイズ予防情報ネット)はそのプロセスもあわせて紹介しているので、ご覧下さい。
http://api-net.jfap.or.jp/lot/2014camp_theme.html

 大まかに説明すると、以下のようなプロセスです。

 5、6月中に東京と大阪で各1回、フォーラムを開催。エイズ対策の現状と課題を議論し、キャンペーンテーマの方向性を検討する。あわせてインターネットでも広く意見を募る。
    ↓
 フォーラムおよびネットで寄せられた意見をエイズ予防財団が集約する。
    ↓
 7月に2回、エイズ対策のNPOや陽性者団体、企業などの関係者、および自治体、厚労省のエイズ対策担当者からなる検討委員会を開催し、テーマ候補案を2~3案にしぼる。
    ↓
 候補案をエイズ予防財団から厚労省に提案する。
    ↓
 厚労省が候補案をもとに今年度テーマを決定し、発表する。

 この方式は2010年から採用され、今年で5回目となります。キャンペーンのテーマを極力、エイズ対策の現場に近いところから組み立てていきたいという目的は一定程度、果たされていますが、まだまだ課題もあります。たとえば、フォーラムの参加者は数十人レベルにとどまり、ネットに寄せられる意見も集約にあたるエイズ予防財団の職員から悲鳴が上がるほどに多くはありません。また、テーマを決定するプロセスに比べると、決定したテーマのもとでのキャンペーンの展開力が弱いという指摘もあります。もう何年もの間、国内ではエイズ対策に対する社会的関心の低下がしばしば指摘されているのですが、現時点での上記のような限界はその影響なのかもしれません。
 ただし、そうした状況下だからこそ逆に、テーマの策定プロセス自体が一つのキャンペーンとして注目されるぐらいになってほしいという期待もあります。テーマを決めるだけでなく、どうして今年はこのテーマを選んだのかということを積極的に伝えていく努力も必要でしょう。情報共有型HIV/エイズキャンペーンサイト「Community Action on AIDS(コミュニティアクション)」には今年のキャンペーンテーマの趣旨説明、およびその短縮版が掲載されているので、ここではその短縮版を紹介します。フルバージョンはコミュニティアクションの公式サイトでご覧下さい。
http://www.ca-aids.jp/theme/

2 キャンペーンテーマ趣旨説明短縮版
 治療の進歩によりエイズの原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染したHIV陽性者が長く生きていけるようになりました。でも、エイズ対策は治療の進歩で役目を終えたわけではありません。HIVに感染している人もしていない人もすでに一緒に生きている。その現実を直視すれば、エイズにまつわる偏見や差別と闘い、HIV陽性者が安心して生活できる条件を整えることはますます重要な社会的課題となっています。
 昨年1年間の国内の新規HIV感染者・エイズ患者報告数は1590件で、過去最多でした。エイズの流行が依然、続いていることは明らかです。今年4月にはHIV陽性者への理解や差別と偏見の解消を呼びかけるLiving Together計画が「AIDS IS NOT OVER ~ エイズはまだ終わっていない」というメッセージを掲げ、セクシャルマイノリティの人権を訴える東京レインボープライド2014のパレードに参加しました。
 エイズの流行も、その流行に影響を受けている人たちの闘いも、まだ終わっていない。2014世界エイズデー国内啓発キャンペーンはそのメッセージを共有し、「AIDS IS NOT OVER ~まだ終わっていない~」をテーマにしています。

保健システム強化とエボラへの対応 エイズ対策の視点から 第73号(2014年9月)

 西アフリカで拡大するエボラ出血熱の流行は、一つの疾病の流行にとどまるものではなく、流行国の保健基盤を含めた社会機能の崩壊、さらには地域の不安定化を招きかねない危機となっています。国連安全保障理事会は9月18日に緊急会合を開き、各国に対応を呼びかける決議を採択しました。
 公衆衛生上の問題を「国際の平和と安全」に対する危機と位置づけ、安保理が決議を採択するのは、2000年と2011年に続いて3例目となります。前の2回はHIV/エイズに関する決議でした。
 安保理は15の理事国が1カ月交代で議長国となります。2000年1月は米国が議長国の順番にあたっており、1月10日にまる1日かけてエイズ問題の集中討議を行っています。当時のアル・ゴア米副大統領が議長を務め、21世紀に向けた安全保障の新たな概念を打ち出したことでも知られる会合です。
 冷戦後10年を経て、安全保障が国家間の紛争や戦争の抑止だけではとらえきれず、保健医療、開発、貧困、環境、麻薬、テロ対策などさまざまな課題を視野に入れる必要があることが認識されるようになりました。日本が力を入れて取り組んでいた「人間の安全保障」にも通じる考え方です。
 安全保障の観点から当時、それら諸課題の中でとりわけ重視されたのが世界規模で広がるHIV/エイズの流行でした。安保理の集中討議を出発点として、同じ年の7月に開かれた九州沖縄サミットでは途上国の感染症対策への新たな追加的資金の必要性が強調され、翌2001年6月の国連エイズ特別総会を経て02年1月に世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)が創設されています。
 そのグローバルファンドの公式サイトには、今年9月8日付のニュースフラッシュで西アフリカのエボラ流行に関する対応が紹介されています。グローバルファンド日本委員会のサイトにも、このうち「エボラ出血熱への対応」「システム強化の必要性」の2本のレポートが日本語仮訳で掲載されているのでご覧ください。
http://www.jcie.or.jp/fgfj/06/2014/20140908.html
 今回の流行は、もともと保健システムの基盤が脆弱だった西アフリカ諸国で発生し、その基盤の弱さのために、本来なら防げるはずの医療の現場でも感染が広がりました。また、それが逆に保健システムの一層の脆弱化を招く結果にもなり、流行国ではエボラだけでなく、初期症状が似ているマラリアや継続的な対応が必要なHIV/エイズ、結核など他の疾病の治療さえ困難な状態です。
 グローバルファンドはエイズ、結核、マラリアという世界三大感染症の流行に対応することを目的に設立された基金ですが、保健システムがうまく機能しなければ、個別の疾病への対応も困難になります。逆にエイズ、結核、マラリアという個別の疾病への対応を抜きにして保健システムの強化を望むことはできません。保健システム強化か個別疾病対策か、という二者択一の選択ではなく、どちらも重要です。
 今回のエボラの流行について、グローバルファンドは、疾病間の保健情報の共有化を進め、エイズやマラリアのプログラムの従事者をエボラ対策に応援派遣するなど、危機への対応を可能にするため、疾病の枠を超えて柔軟に人材や資金を活用していく方針を打ち出しています。日本は九州沖縄サミットにおける感染症分野への貢献から、グローバルファンドのコンセプトの生みの親として高い評価を受けてきました。このことは21世紀の日本の貴重な外交資産にもなっているだけに、感染症対策をめぐる国際社会の動きには引き続き高い関心を示していく必要がありそうです。

2 日本語でエボラ情報を得る
 エボラ出血熱への対応は「はじめに」でも紹介したようにHIV/エイズ対策とも無縁ではありません。日本語で情報が得られるサイトをいくつか紹介しておきましょう。感染経路や医療環境を考えれば、日本国内でエボラ出血熱の流行が拡大する可能性は極めて低いと考えられます。国立感染症研究所の公式サイトには8月8日付でリスクアセスメントが掲載されているのでご覧ください。
http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/1094-disease-based/a/viral-hemorrhagic-fever/ebora/idsc/4905-ebola-ra140808.html
 ただし、それならもう日本は対応しなくてもいいやということにはなりません。国境なき医師団日本のサイトには、流行国からの現地情報が定期的に報告されています。現地の緊迫した状況や混乱、医療従事者不足の深刻さなどが伝わってきます。
http://www.msf.or.jp/
 元小樽市保健所長の外岡立人医博のサイト「パンデミックアラート」では現在、エボラ情報を集中的に取り上げています。欧米メディアの報道の日本語による紹介も手厚く、速報性が高いことから現地の状況や世界の対応を把握するうえで大変、参考になります。
http://pandemicinfores.com/diary.html
 厚生労働省検疫所のサイトFORTH(海外で健康に過ごすために)には、公式情報がこまめに更新されています。エボラだけでなく、海外旅行者が注意すべき他の疾病の情報も豊富です。
http://www.forth.go.jp/news/2014/09021454.html

もう、一緒に生きている 第74号(2014年10月)

 HIV/エイズ分野のさまざまな動きを紹介する情報共有型キャンペーン「コミュニティアクション」(Community Action on AIDS)の2014年度キャンペーンが10月16日に始まりました。キャンペーン期間は世界エイズデー(12月1日)をはさみ、12月15日(月)までの2カ月間です。エイズ&ソサエティ研究会議、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス、aktaの3つのNPO法人と公益財団法人エイズ予防財団が協力して進めるこのコミュニティ主導のキャンペーンも今年で4回目を迎えました。東京都エイズ予防月間(11月16日~12月15日)など行政の啓発キャンペーンとも連動し、相乗効果を期待したいですね。
 コミュニティアクションはこれまで、ウエブサイトやフェイスブックを通じたネット空間での情報提供に力を入れてきました。限られた予算の中で、それ以上は手を広げられないという事情もあったのですが、今年は新企画として3枚のポスターを作成しています。公式サイトの『ポスターができました』というお知らせのページには、ポスター画像もpdf版で掲載されているのでご覧ください。
http://www.ca-aids.jp/features/114_poster2014.html
 《ポスターの写真は、セクシャルマイノリティの人権を訴える4月27日の東京レインボープライド2014パレードに参加したLiving Together計画のフロート(先導車)、および東京の都心を進むその行進の様子です。フロートにはUNAIDS(国連合同エイズ計画)ランセット委員会の委員である安倍昭恵さん、ドラアグ・クイーンのHOSSYさん、そしてHIV陽性者で当実行委員会委員長の長谷川博史が乗り込みました》
 今年4月27日のパレードに安倍首相夫人、昭恵さんが参加したことは、海外でもニュースになるなど、当時はかなり話題になりました。ポスターの説明でも触れられているように昭恵さんはエイズ対策と国際保健について検討するUNAIDS/ランセット委員会の委員であり、今年2月13、14日にロンドンで開かれた委員会の最終会合では、HIV陽性者である長谷川さんの名前をあげて次のように語っています。
 『少しずつ、アフリカのいくつかの国や日本の東京で、私は長谷川博史さんのようなHIV陽性者と知り合い、一緒に活動するようになりました。HIV陽性者とどのように交流していくのか、あるいは目を背けてしまうのかということは、私たち自身の姿を映し出す鏡のようなものだと考えるようにもなりました』
 この時のスピーチは英国の著名な医学誌ランセットのリチャード・ホートン編集長が「国際的なエイズの流行への対応が人間の連帯という価値を反映していることを明らかにし、注目を集めた」と書くなど委員会関係者の間でも高く評価されています。その意味では、パレード参加も、ポスターへの登場も、サプライズというわけではありません。
 Living Together計画のフロートは、2つのメッセージをパレードで伝えていました。一つは「エイズはまだ、終わっていない」という現状への警告的認識。そしてもう一つは「HIVを持っている人も、そうじゃない人も、ぼくらはもう、いっしょに生きている」という事実の肯定的な追認です。まだ、終わっていないし、もう、一緒に生きている。それはまさしく、日本の現実でもあります。

ギャップを埋めなきゃ終わらない 第75号(2014年11月)

 衆議院が11月21日に解散し、世の中は総選挙に走り出しています。有権者にとって、選挙は最大の意思表示、意思決定の機会です。関心を持たないわけにはいきません。あくまで、この点はしっかりと認識したうえでの話ですが、そのあおりを受けて、12月1日の世界エイズデーに対する関心が今年は少々、低下してしまうのではないかという心配もあります。流行の初期段階から繰り返し指摘されてきたことですが、エイズの病原ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)は世の中の動きを気にして、選挙で忙しいようだから、この年末はちょっと感染を控えておこうかなどという配慮はしません。感染の条件が整っていれば、感染する。整わなければしない。逆に言えば、その条件が成立しないような手立てを講じれば感染の拡大を抑えることができるということでもあります。
 この際、改めて世界エイズデーに向けた今年のメッセージを紹介しておきましょう。厚生労働省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマは「AIDS IS NOT OVER ~ まだ終わっていない~」です。わざわざ終わっていませんよと強調しなければならないのは、「もうエイズの流行は終わったんじゃないの」といった意識が社会的に広がっていることへの危惧の表明といった側面もあります。
 HIVに感染した人の体内でウイルス増殖を抑える抗レトロウイルス治療(ART)の進歩により、最近は国際的なレベルで「エイズ流行の終結」は可能だ、もう手の届くところにまで来ている・・・といった類いのメッセージがしばしば伝わってきます。かりにそうだとしても、そのためにはいま、エイズ対策に力を入れなければならない。国連合同エイズ計画(UNAIDS)はこの点を強調して、 《CLOSE THE GAP(ギャップを埋めよう)》を今年のメッセージとして掲げています。11月10日に発表されたサンプル・プレスリリースの日本語仮訳がHATプロジェクトのブログに掲載されているのでご覧下さい。
http://asajp.at.webry.info/201411/article_4.html
 冒頭のクレジット部分(日本語仮訳では【】の中)は場所と日付を特定していません。それぞれの国や地域や町で実情にあわせ使い勝手がよくなるよう工夫したのでしょうね。UNAIDSは2030年のエイズ流行終結を国際的なエイズ対策の大目標として掲げ、その実現にはこれから5年が正念場だということで、11月20日には『高速対応:2030年のエイズ終結に向けて』という新たな報告書も発表しています。予防、治療、支援などのサービスの供給能力と現実とのギャップを埋め、2030年にエイズ流行終結を実現するには、2020年までにFast Track(高速対応)で対策に取り組む必要があるという趣旨の報告書です。そのプレスリリースの日本語仮訳もHATプロジェクトのブログに掲載されています。
http://asajp.at.webry.info/201411/article_6.html
 リリースのタイトルは『高速対応で国際保健の脅威としてのエイズ流行を終結』となっているところにも注目しておく必要があります。つまり、UNAIDSが目指す「エイズ流行終結」は、「エイズの流行が国際保健の脅威ではなくなる」という状態を実現することです。HIV感染がゼロになる世界、HIV陽性者が存在しない社会を目指しているわけではありません。具体的にはどういうことか。その点も以下に紹介しておきましょう。

2 年間新規HIV感染20万人で流行は「終結」
 UNAIDSの報告書『高速対応:2030年のエイズ終結に向けて』には「90-90-90」と「95-95-95」という二つの数値目標が示されています。
 「90-90-90」とは、2020年までに世界中のHIV陽性者の90%が自らの感染を知り、そのまた90%が治療を受け、さらにその90%の人の体内のHIV量が検出限界以下に保たれる状態を実現することです。
 つまり、90×90で、世界のHIV陽性者の81%は抗レトロウイルス治療を受け、その81%の人の90%だから、2020年には世界のHIV陽性者の72.9%(81×90)が、体内のHIV量を極めて低く抑え、その人から他の人に性行為などでHIVが感染するのを心配しないですむような状態を維持しているということになります。この90-90-90が実現すれば、世界の新規HIV感染者数は年間50万人程度(2013年の約4分の1)に抑えられるとUNAIDSは試算しています。
 95-95-95はその目標を一段、高くして2030年までにHIV陽性者の95%が自らの感染を知り、そのまた95%が治療を受け、さらにその95%の人の体内のHIV量が検出限界以下に保たれる状態を実現しようという目標です。机上の計算のお手本みたいな印象を受けますが、その状態が実現されても、世界の新規HIV感染はゼロにはなりません。UNAIDSの試算では年間20万人程度は新規にHIVに感染する人がいるということです。
 計算通りにいくかどうかは、今後の世界の努力次第ということになりますが、それでも世界はHIV陽性者が存在しなくなる状態やあるいは存在できない社会を目指しているわけでは決してありません。90-90-90であっても、95-95-95であってもHIV感染に関連する差別は「ゼロ」にすることが目標となっています。現実はどうなのか。「エイズ流行終結」という威勢のいい掛け声が、とりわけ医療関係者から発せられることは、今後も繰り返しあるでしょうが、そうした場面に遭遇したときには、この点をきちんと理解し、確認しておく必要がありそうです。

2014年を振り返る 第76号(2014年12月)

 寒波と総選挙の師走が慌ただしく過ぎていきます。2014年も残りわずかですね。今年の世界エイズデーは解散総選挙のあおりを受けた感もぬぐえませんが、こういうときこそ継続的な課題としての情報発信はしっかりと行っていきましょう。厚労省の世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマ『AIDS IS NOT OVER~まだ終わっていない』はまさしく、いま必要なメッセージですね。そして、東京都のエイズ予防月間のテーマ『私のコト。』も一段とメッセージの重要度が増した印象です。
 今年はどんな年だったのか。エイズ対策の観点から主な出来事を10項目、ピックアップしてみました。

・ウガンダの反同性愛法に憂慮(2月)
http://asajp.at.webry.info/201402/article_5.html
http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/08/03/144100
 昨年12月のナイジェリアに続き、ウガンダでも2月、同性愛行為を犯罪の対象とし、罰則を厳しくした改正反同性愛法が成立しました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)や世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)はこうした動きに対し、有効なHIV対策をさまたげるものとして繰り返し憂慮を表明しています。ウガンダの場合、同性愛の関係を「援助または扇動」する行為も懲役刑の対象となっていましたが、8月に憲法裁判所から法律を無効とする決定が出されています。

・米国映画『ダラス・バイヤーズクラブ』が第86回アカデミー賞の主演、助演両男優賞を受賞(3月)
http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/03/18/205400
 主演男優賞のマシュー・マコノヒー、助演男優賞のジャレッド・レトはいずれもHIV陽性者役でした。レトは受賞スピーチで「これはエイズとの闘いで亡くなった3600万人に捧げられた賞です。そして、自分が何者であり、誰を愛しているかという、そのことのために不当な扱いを受けたあなたたちの賞です。世界が注視する中で私はいま、あなたとともに、そしてあなたのために、ここに立っています」と語りました。

・東京レインボープライド2014のパレードに安倍昭恵さんが参加(4月)
http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/04/28/142400
 「AIDS IS NOT OVER~エイズはまだ終わっていない」をメッセージに掲げたLiving Together計画のフロートに安倍首相夫人、昭恵さんが飛び入り参加。HIV陽性者の長谷川博史さんとともにエイズとの闘い、そしてLiving Together(一緒に生きている)という考え方に理解を呼びかけました。

・2013年の国内における新規HIV感染者・エイズ患者報告数は過去最多1590人(5月)
http://www.ca-aids.jp/features/105_hiv_1590.html
 わが国の年間新規報告は2007年以降1500件前後で推移しており、「高止まりのまま横ばい」(エイズ動向委員会、岩本愛吉委員長)の傾向が続いていました。その中での過去最多報告です。

・akta存続の危機(通年)
http://www.ca-aids.jp/features/109_akta_dounaru.html
 東京・新宿二丁目のコミュニティセンターaktaはHIV/エイズ予防啓発拠点として、首都圏のMSM(男性と性行為をする男性)のHIV感染予防に大きな貢献を果たしてきました。海外から視察に訪れる専門家も多く、エイズ対策分野の迎賓館と呼ばれることもあります。そのaktaをはじめ全国に6カ所ある同様のコミュニティセンターが厚労省のエイズ対策予算の削減により存続の危機に追い込まれようとしています。

・メルボルンで第20回国際エイズ会議(AIDS2014)開催(7月)
http://asajp.at.webry.info/201407/article_12.html
 会議の開幕2日前の7月18日にはウクライナでマレーシア航空機撃墜事件が起き、亡くなった乗客の中には国際エイズ学会(IAS)のジョープ・ラング元理事長ら会議参加予定者6人が含まれていました。

・西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネでエボラ出血熱の流行が拡大(3月~)
http://asajp.at.webry.info/201411/article_2.html
 重大な公衆衛生上の危機となった西アフリカのエボラ流行に対し、UNAIDSの公式サイトにも特設ページが設けられました。ミシェル・シディベ事務局長が緊急対応を呼びかけています。

・UNAIDSが報告書『高速対応:2030年のエイズ終結に向けて』を発表(11月)
http://www.ca-aids.jp/features/122_unaids.html
 報告書は2030年のエイズ流行終結を目指し、今後5年間の対策強化の重要性を強調。2020年までに90-90-90(HIV陽性者の90%が検査で感染を知り、その90%が治療を受け、その90%が体内のウイルス量を検出限界以下に抑える)を実現する必要があるとしています。その段階での世界の年間新規HIV感染者数は推定50万人ということです。

・米CDCの公式サイト特集ページ『 バイタルサインズ』で、HIV検査、治療の普及の必要性を特集(11月)
http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/11/30/000928
 UNAIDSは2020年までに90-90-90を目指していますが、現実はどうなのか。医療基盤の整った米国の状況をCDCが報告しています。米国内の120万人のHIV陽性者のうち86%はすでに検査で感染を知っているけれど、実際に治療を受けている人は40%にとどまり、治療の成果で体内のウイルス量が低く抑えられている人は30%です

・世界エイズデーを中心に大阪エイズウィーク開催(11~12月)
http://osaka.aids-week.com/
 第28回日本エイズ学会学術集会・総会が12月3~5日に大阪で開催されたのに合わせて1日の世界エイズデーを含む前後12日間が大阪エイズウィークとして位置づけられ、イベントや講演会などさまざまなエイズ啓発活動が展開されました。東京都のエイズ予防月間(11月16~12月15日)と並び、今後も継続的に実施されることを期待したいですね。